田口儀之助
田口儀之助(たぐち ぎのすけ)
昭和期の実業家
愛刀家
概要
- 工具メーカー株式会社ベッセルの創業者。
- 愛刀家として知られ、数々の名刀の来歴に名を残している。
- 大正5年(1916年)に15歳で田口鉄工所を創業しており、生年は明治34年(1901年)生まれではないかと思われる。
- 田口鉄工所は、日本捻廻株式会社を経て、現在株式会社ベッセルとなっている。特にドライバーで有名。
- 人事興信録によれば、昭和44年(1969年)7月12日死去、68歳。
刀剣
- 刀剣趣味は、昭和13年(1938年)~14年頃から始めたという。
- その後、昭和23年(1948年)9月に本阿弥光遜氏と出会ったことで、系統だって日本刀を見る方法を知り、深くハマっていったという。
私が刀を眺める楽しさにとり憑かれたのは、昭和十三、四年頃だったので、いわば戦中派であろう。当時の名刀といえば、せいぜい今日の二級品で、重要美術品の兼氏の太刀一本を見るのに、一日がかりの腰弁さわぎで、遠路でかけたものだ。それが戦後は思いも及ばぬ名刀が旧大名家から放出され、私たちの目にふれるようになった。
忘れもしない昭和二十三年九月、故光遜先生と知りあい、それまでの暗中模索から、なんとか系統だって見る方法を知るようになった。当然、従前とは違った分野がひらけ、この年は私にとって記念すべき年になった。
著名刀剣一覧
- 山伏国広
- 昭和30年(1955年)の重要文化財指定時には田口氏の所持となっている。
- くろんぼ斬景秀
- 恐らく重要文化財指定の頃に田口氏が所持していたようだ。
- 桑山保昌
- 松本高氏が所持する前、昭和30年(1955年)には田口儀之助氏所持。
- 前田正宗
- 小竜景光写し
- 銘「文久二年五月 応山田吉年好 備前介宗次写之」の小竜景光の写しを所持していた。
- 太刀
- 銘「備前国吉岡住左近将監紀助光 南無八幡大菩薩/南無妙大菩薩 元亨二年三月」。昭和15年(1940年)5月3日旧国宝指定、昭和28年(1953年)3月31日国宝指定。宇佐美莞爾氏旧蔵
- 太刀
- 銘助包。附、糸巻太刀拵。昭和32年(1957年)2月19日国宝指定
- 太刀
- 銘備州長船住景光。昭和29年(1954年)2月12日重要文化財指定
- 刀
- 無銘助真。昭和31年(1956年)6月28日重要文化財指定
- 太刀
- 銘備前国長船住長光作/正安二年二月吉日。昭和27年(1952年)3月29日重要文化財指定
- 脇指
- 銘「日州古屋住国広作/天正十四年八月吉日」。昭和30年(1955年)2月2日重要文化財指定
- 太刀
- 銘国時。昭和31年(1956年)6月28日重要文化財指定
- 短刀
- 銘備中国住次直作/延文三年十二月日昭和25年(1950年)8月29日重要文化財指定
- 刀
- 金象嵌銘助光/磨上光徳(花押)。昭和30年(1955年)2月2日重要文化財指定
- 太刀
- 銘行秀。昭和30年(1955年)6月22日重要文化財指定
- 短刀
- 銘国光/元応二年三月二十日。昭和33年(1958年)2月8日重要文化財指定
- 刀
- 銘奥州仙台住山城大掾藤原国包/寛永五年八月吉日。昭和33年(1958年)2月8日重要文化財指定
- 太刀
- 銘信房作。附糸巻太刀拵。徳川光友安福寺寄進。昭和25年(1950年)8月29日重要文化財指定
- 短刀
- 銘長谷部国重/延文二年己巳二月日。長9寸6分(31.7cm)、反り8厘。干支に誤りがあるが正真。
- 刀
- 銘 以南蛮鉄於武州江戸越前康継/慶長十九年八月吉日。昭和34年(1959年)6月27日重要文化財指定。
- 太刀
- 銘 守家。昭和36年(1961年)2月17日重要文化財指定。
- 刀
- 無銘 伝国行。昭和36年(1961年)6月30日重要文化財指定。
- 太刀
- 銘 清綱。昭和38年(1963年)7月1日重要文化財指定。
- 以下は田口儀之助氏からではなく、田口輝雄氏が取得したものの可能性がある
- 小青江
- 前田家伝来。昭和27年(1952年)3月29日重要文化財指定。浅原健三氏旧蔵。
※重要文化財指定のあと、所持していたと見え、昭和61年(1986年)の日本刀重要美術品全集では田口輝雄蔵となっている。 - 太刀
- 銘大和則長。昭和11年(1936年)5月6日旧国宝指定。昭和25年(1950年)8月29日重要文化財指定。瀬戸保太郎旧蔵
- 村雲江
- 昭和27年(1952年)3月29日重要文化財指定。島田和昌氏旧蔵
- 刀
- 金象嵌銘光忠 光徳花押。昭和10年(1935年)4月30日旧国宝指定、昭和26年(1951年)6月9日国宝指定。清田政人氏旧蔵
- 太刀
- 銘 備前国長船住近景/嘉暦二二年□月日。昭和10年(1935年)4月3日旧国宝指定、昭和28年(1953年)11月14日国宝指定。大河内正敏氏旧蔵
- 太刀
- 銘恒光。昭和17年(1942年)6月26日重要文化財指定。昭和25年(1950年)8月29日重要文化財指定。加藤正治氏旧蔵
- 以下は田口儀之助氏からではなく、田口一重氏が取得したものの可能性がある
- 太刀
- 銘 正恒。昭和6年(1931年)11月14日旧国宝指定。前田利為氏所持。昭和28年(1953年)11月14日国宝指定。旧蔵前田利為氏。
- 太刀
- 銘 備州長船住近景/元亨三年十月日。昭和34年(1959年)6月27日重要文化財指定。これは田口儀之助氏旧蔵。※上の「嘉暦二二年」とは別の近景。
- 以下は田口儀之助氏からではなく、田口康明氏が取得したものの可能性がある
- 儀之助氏の死後、所蔵刀剣は一族で分けられたようで、昭和55年(1980年)頃の書物では田口氏の名前が散見される。
- 確認できている一族は次のようになる。
- 田口輝雄氏:2代目社長
- 田口一重氏:3代目社長
- 田口康明氏:4代目社長
関連項目
Amazon Prime Student6ヶ月間無料体験