綱切筑紫正恒


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Table of Contents

 綱切筑紫正恒(つなきりつくしまさつね)

太刀
綱切
長二尺四寸六分

  • 表裏に樋を掻き通す。
  • 享保名物帳所載(ヤケ)

    綱切筑紫正恒 長二尺四寸六分 無代 御物
    佐々木四郎高綱宇治川先陣の節、水底の張り綱を切る
    表裏樋之

  • 詳註刀剣名物帳

    此佐々木の綱切は信州諏訪神社にもあり又華族某家にもあり何れが其物なりや箇様に三刀ありては判断を付難し暫く本文の儘とす。筑紫正恒は豊後の紀新太夫行平の孫と云説あり(古刀大全)また行平の子と云説もあり(鍛冶備考)何れとも判然せす豊後に正恒二人、行平の子と云ものは承久頃また正中頃に一人あり二字銘あり豊後住と切るもあり、また備中の正恒豊前に移り住みたる者あり是は別人なり

    • 佐々木高綱の綱切が三刀伝わっており、なおかつ作者についても諸説あると書かれている。

 由来

  • 寿永2年(1183年)、平家打倒の挙兵をした源氏のうち、いち早く上洛した木曽義仲は京で乱暴狼藉を働き、やがては後白河法皇とも対立する。9月、義仲が備中国水島の戦いで平家軍に大敗すると、後白河法皇は義仲を見放し鎌倉の源頼朝に東海道・東山道の支配を認める院宣を下し、頼朝に接近する。
  • 義仲は院御所の法住寺殿を攻撃し、後白河法皇を幽閉して政権を掌握する(法住寺合戦)。その後義仲は後白河法皇に強要して頼朝追討の院宣を発出させ、さらに翌寿永3年(1184年)1月、義仲は征東大将軍に任命される。
  • ここで源頼朝は近江に進出させていた源範頼、源義経に木曽義仲追討を命じる。
  • 瀬田の唐橋と宇治に兵を分けた義仲に対して、瀬田には範頼が、また宇治には義経が進出し、戦闘になる(宇治川の戦い)。
  • 義経配下の佐々木高綱は、この戦いで頼朝に与えられた名馬「生唼(いけづき)(池月)」に跨がり、同じく名馬として名高い「磨墨(するすみ)」に跨った梶原景季と先陣争いを演じている。「綱切」の名は、この時に佐々木高綱が宇治川の中に張っていた綱を太刀で切ったことにちなむという。

 来歴

  • 戦いの後、佐々木高綱から桜田十郎の所持となる。
  • 貞和・観応ごろ(1345~1352年)相州貞宗が近江に召しだされ、命を受け「綱切」の写しを作ったという。
  • 明徳3年(1392年)、京都の相国寺(しょうこくじ)で落成供養が行われた際には、高綱の兄(佐々木定綱)の子孫にあたる六角満高(佐々木左京大夫満高)が佩用している。
    六角満高は近江守護六角氏(近江佐々木氏嫡流)。幼少時から3代将軍足利義満に近侍を許された寵童のひとり。正妻は尊氏の四男足利基氏の娘。その後も義満に重用され、子の満綱の妻には義満の娘を迎えている。一説に義満の同母弟ともいう。
  • その後弘治(1555年)ごろまで六角家で所蔵していたという。
  • 江戸時代に入り、徳川将軍家の所蔵となる。
  • 明暦の大火で消失する。


 棚守家蔵

  • 佐々木高綱以後の伝来については異説がある。
  • それによれば、佐々木高綱の太刀は、安芸厳島神社の社家、野坂家に伝来したという。
  • その後同社の社家である、棚守家に伝わった。
  • 伝来によれば「アヲノ太刀」と呼ばれていたとするため、この場合備中青江正恒の作ということになる。




 異説

  • 詳註刀剣名物帳では三刀あるとするが、そのうち諏訪神社伝のものは「綱切丸」であり、また相良家、島津家にもそれぞれ相伝している。

    此佐々木の綱切は信州諏訪神社(綱切丸)にもあり又華族某家にもあり何れが其物なりや箇様に三刀ありては判断を付難し暫く本文の儘とす。

  • 相良家、島津家伝については、いずれも治承・寿永の乱(いわゆる源平合戦)ではなく、その約40年後の承久の乱の宇治川の戦いで佐々木高綱「以外」の人物が綱を切っており、かつ作者も正恒ではない。

 相良家蔵「綱切

太刀
銘 宗吉
綱切
二尺六寸三分

  • 古備前宗吉の作。
  • 詳細は「綱切」の項参照
  • この相良家伝の綱切では、承久の乱の宇治川の戦いで、河中の綱を切ったのは相良長頼ということになる。

 島津家蔵「綱切


銘 兼永
綱切
長一尺七寸八分

  • 五条派、兼永の作。
  • 詳細は「綱切」の項参照
  • この島津家伝も承久の乱の宇治川の戦いで、河中の綱を切ったのは島津忠時ということになる。


 関連項目

綱切丸
佐々木高綱所持、諏訪神社蔵
綱切
相良家蔵、島津家蔵。
綱切貞宗
織田信長所持、蠣崎(松前)家伝来。

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