詳註刀剣名物帳
詳註刀剣名物帳(しょうちゅうとうけんめいぶつちょう)
概要
- 徳川吉宗の命により編纂された名物帳は、その後も版を重ね、幕末には本阿弥長根により「名物三作」が独立し、現在「享保名物帳」と呼ばれる体裁が成立する。
- この本阿弥長根による芍薬亭本を底本とした星野求与本が出され、さらにそれを宮内庁御刀剣係となった今村長賀による写本を底本として出版されたのが「詳註刀剣名物帳」である。
- 大正2年(1913年)にまず初版が出され、その6年後の大正8年(1919年)に増補版が出版されている。
国立国会図書館デジタルコレクション
- 詳註刀剣名物帳はいずれの版についても国立国会図書館デジタルコレクション(旧称:近代デジタルライブラリー)でインターネット公開されており、インターネット環境があれば誰でも無料で閲覧できる。
大正2年版
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 詳註刀剣名物帳 : 附・名物刀剣押形
大正二年三月廿七日印刷
大正二年三月三十日発行
著者 羽皐隠史
発行者 金港堂書籍株式会社
代表者 原亮一郎
印刷者 平井登
増補版
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 詳註刀剣名物帳 : 附・名物刀剣押形
大正八年十一月一日印刷
大正八年十一月四日発行
著者 羽皐隠史
発行兼 小林慶
印刷者
発行所 嵩山房
印刷所 東洋印刷株式会社
- この国立国会図書館デジタルコレクションによって、いわゆる享保名物帳の中でもっとも閲覧しやすいポピュラーな版となっている。
高瀬羽皐
- 著者の「羽皐隠史」とは、高瀬羽皐のペンネームの一つである。
緒言
- 初版
一、刀剣名物帳は、八代将軍の享保四年己亥霜月本阿弥市郎兵衛より光徳以来の控帳によりて、上下二冊に綴り久世大和守を経て奉りしものにて、今世に行はるゝものは當時の副本が本阿弥家にありしを、世古延世と云者寫取りて世に出せしなり
一、名物帳は異本数種あり、享保の時には三作の部六十八腰を上巻とし、次に村雨郷以下篭手切り正宗まで百腰、焼失の部八十一腰を合せ下巻とし、上下二冊合せて弐百四十九腰を記して呈せしものなり、其後に至り追記の分二十五腰を加へ合せて二百七十四刀なり、「三宅本」には二百七十刀あり、「松崎本」には二百刀あり、「西垣本」には二百四十九刀あり、「今村本」は二百七十八刀、斯く諸書の刀数一定せず、此本は余が蔵本を主とし、今村本を参考として其刀数を定め、順序は「今村本」によりて之が次第を立しなり
一、此の帳中重出せしものあり、原本の儘成るべく改删せざるを以て本意としたるを以て、重出の分も其儘出せしものあり、島津正宗の如き凌藤四郎の如き是なり、本阿弥の説明追記せしと覚しき文字なきにあらず并を有の儘に存するが為め修正を加へず
一、帳に載る處の名物刀は悉く諸家に現在なり、中に就て帝室御物となりし物あり、甲家より乙家に轉ぜしものあれども、并は十中の一に過ず帳中の名刀にて海外に流出せしものありしを聞ず、また焼失して其形を失ひしも多からず
一、世に存する名物の刀、この帳の記載に漏れし物また少なからず、本書巻尾に記せし今村氏筆記の如きも帳外なりまた余が他日帳外名物記を著さんが為め見聞の儘に記したる名物数十刀に下らず、此等は他日帳外名物刀記として同好の諸君に頒つの期あるべし
一、本書詳註と題すと雖も實は殆ど略注なり、筆を執るに及びて引用の書に乏しきを感じ、「由来定かならず」と記入せし刀少なからず、また所持者のいかなる人なりしや定かに知れ難き者あり、蔵する處の歴史記録を悉く取調ぶるは繁机の身に取て頗る難し、故に此處不備の點は他日増補して第二版に至り初て完全に近きものとなすを期す読者之を諒すべし
大正元年九月二十日天賜苑の春秋堂に於て 羽 皐 誌
- 増補版追記
一、大正元年秋刊行せし名物帳に、多少の増補をなし、更に出版するに付一言す
一、名物刀の由来に付、誤りを傳えしものなきにあらず、其内二三刀著しき誤謬あるものあるに付、今同訂正し且つ増補せり、其増補せし分は「補」の符號を付す
一、帝室御傳来の名物は、前版大略を記したれど、其後加古氏の筆記を得たるを以て、更に筆を加へたり、また落丁本の古き名物帳写本により四五刀追加せしものあり、其他はみな原板の儘なり
大正八年二月三日武蔵野の退耕庵に於て
羽 皐 隠 史 誌
押形
羽皐云名物刀剣の押形圖様は「大坂御物圖様巻物」「埋忠押形」「近江守継平押形」「光悦押形」等に悉く記したれど限りある小冊子悉く之を模すべきにあらず故にこゝには著名の物十数刀を掲ぐ木版其眞を傳ふる能はざるは遺憾なるのみ
所載刀剣
- 次の種類にわかれ、全部で302口を登載する。
- このうち「御所の剣」については単に刀工の名前だけを記したものもある。
名物三作
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