古筆
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古筆(こひつ)
- 古筆とは、古人の筆跡あるいは古い筆跡をいう。
- 古筆見(古筆鑑定)の略。古筆家。
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古筆の概要
- 書道史においては、古筆の中でも特に平安時代から鎌倉時代の伏見天皇の頃までの400年間の名筆を珍重する。
- 「古筆」の文字が現れるのは13世紀以降で、尊円法親王(1298-1356。伏見天皇の第6皇子)の「入木抄」などに見られる。
- この尊円法親王ののち、後崇光院など朝廷・公家の間に古筆を賞翫する流れが受け継がれていった。
古筆切
- 桃山時代の茶道の広まりとともに、当初唐絵や墨跡が中心であった茶掛として古筆を使用することが広まり、掛幅にするために切断することも頻繁に行われるようになった。こうして断簡となった古筆は、古筆切と呼ばれる。
- この頃の古筆家としては、三条西実隆、烏丸光広、大村由己、鳳林承章、松花堂昭乗、狩野探幽、近衛基煕・近衛家熙などが知られている。
大村由己(おおむら ゆうこ)秀吉の右筆、御伽衆。前職は禅僧で、三木城攻め以降に秀吉に仕えた。「天正記」の筆者として知られる。「天正記」は播磨別所記、惟任退治記、柴田退治記などで構成される秀吉の伝記。
鳳林承章(ほうりん じょうしょう)
准大臣勧修寺晴豊の六男。母は刑部卿兼陰陽頭・土御門有脩の娘。兄弟に権大納言勧修寺光豊などがいる。前奏となり、後に北山鹿苑寺(金閣寺)二代住持となり、さらに万年山相国寺に入り、のちに第九十五世へ昇る。後水尾上皇との交流があり、「隔冥記」を記した。
松花堂昭乗(しょうかどう しょうじょう)真言宗の僧侶。堺の出身で俗名は中沼式部。秀次の落胤という俗説がある。なお「松花堂弁当」は、料亭「吉兆」の創始者となる湯木貞一が昭和初期に茶室「松花堂」で行われた茶会用の弁当を作ったのに始まる。
- 戦国武将の中でも、特に豊臣秀次は古筆蒐集に熱を上げたことで知られている。また秀吉も「高野切」を所持したことで知られている。
- 古筆切は種類により分けられている。
- 歌切:古今和歌集など詩歌
- 経切:仏教の経典
- 物語切:物語の断簡。「源氏物語切」、「伊勢物語切」、「大和物語切」、「伊勢物語切」など
手鑑
- 室町時代になると公家の間で古典への関心が高まり、さらに戦乱により多くの書画が失われるなどすると、巻物の一部を切り取って収集した上で「手鑑」として鑑賞する風潮も盛んになった。江戸時代に入ると手鑑を求める声はさらに大きくなり、木版画による出版も行われるようになっている。
- 著名な手鑑
- 藻塩草
- 古筆家の鑑定台帳。古筆切242葉を収める。表に117葉、裏に125葉の古筆を貼り付けしている。国宝、京都国立博物館所蔵
e国宝 - 手鑑「藻塩草」 - 見努世友
- (見ぬ世の友)国宝、出光美術館所蔵 国指定文化財等データベース
- 翰墨城
- 国宝、MOA美術館所蔵 国指定文化財等データベース
- 月台
- 重要文化財、東京国立博物館所蔵 国指定文化財等データベース
- 大手鑑
- 重要文化財、陽明文庫所蔵 国指定文化財等データベース
- 披香殿
- 平成に入ってから川崎市内の旧家から発見された手鑑。桐箱の「土屋能登守」の墨書により土屋家伝来品と見られている。表に167枚、裏に176枚、合計343枚の古筆を収録。表紙裏見返しに狩野常信の四季絵が描かれる。小野道風直筆の「絹地切」に登場する”披香殿”の3文字にちなんで命名された。
川崎市教育委員会:古筆手鑑「披香殿」 - 濱千鳥
- 表に160葉、裏に157葉、計317葉。公爵前田家伝来、出光美術館所蔵。
- 国宝指定を受けている「翰墨城」、「藻塩草」、「見ぬ世の友」を三大手鑑と呼ぶ。また「大手鑑」をあわせて四大手鑑とも呼ぶ。
古筆鑑定
- こうして”古筆切”となった古筆は、古筆切の筆者や真贋を鑑定する需要を起こし、これが「古筆見」と呼ばれる。
- 当初は有職故実などに詳しい公家が重用されるが、のち烏丸光広に師事した平沢弥四郎は豊臣秀次により「古筆」の姓と「琴山」の極印を与えられて「古筆了佐」を名乗り、古筆鑑定(古筆見)を家業とするに至った。
著名な古筆切
- 古筆切の中でも、著名なものは特別に名前で呼ばれることがある。
- 水無瀬切
- 後鳥羽天皇による新古今集の古筆切。水無瀬離宮にちなむ。
- 石山切
- 「西本願寺本三十六人集」のうち、貫之集下と伊勢集の二帖を昭和4年(1929年)に分割したもの。
- 岡寺切
- 「西本願寺本三十六人集」のうち、源順集を分割したもの。
- 高野切
- 伝紀貫之筆「古今和歌集」。実は源兼行筆とされる。巻九の巻頭の17行分の断簡は豊臣秀吉が所持し、のち木食応其へと下賜されたものが高野山に伝わったことから「高野切」と呼ばれることとなった。
- 20巻:旧土佐藩主山内家所蔵、平成16年(2004年)に県が7億円で山内家から購入した。
- 本阿弥切
- 古今和歌集の写本で、本阿弥光悦が愛蔵していたことにちなみ、「本阿弥切」と呼ばれる。現存するのは巻十、十一、十二、十三、十四、十六、十七、十八のみである。
・巻十二の零巻は国宝指定を受けており京都国立博物館所蔵。e国宝 - 古今和歌集第十二残巻(本阿弥切本)
・巻十六の大部分と巻十七の一部が三の丸尚蔵館所蔵。旧御物。
・巻十と巻十一の一部をあわせた零巻はかつて益田孝が所蔵していたが、後に分割された。 - 本能寺切
- 伝藤原行成筆で、小野篁、菅原道真、紀長谷雄らの漢文の一節を書写したもの。国宝、京都・本能寺所蔵。
- 亀山切
- 古今和歌集の写本。丹波国亀山藩松平家に伝来し、のち益田孝が所持した。
e国宝 - 古今和歌集巻第二、第四断簡(亀山切) - 竹屋切
- 源氏物語断簡。伝後円融天皇筆。手鑑「藻塩草」の一部として現存し国宝指定。京都国立博物館所蔵
形状によるもの
- 四半切
- しはんぎれ。縦長長方形の冊子本を截断したもの。半紙の半分の大きさ。※大四半はこの変形版
- 六半切
- ろくはんぎれ。正方形の冊子本を截断したもの。全紙の六分の一の大きさ。※小六半はこの変形版
- 巻物切
- 巻紙本を截断したもの
関連項目
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