三の丸尚蔵館
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皇居三の丸尚蔵館(こうきょさんのまるしょうぞうかん)
宮内庁所管の博物館
皇居東御苑内
- 2023年の新施設への移行に伴い、「皇居三の丸尚蔵館」と改称することが決まった。Ⅰ期棟開館予定日は2023年11月3日。全面開館は令和8年(2026年)度を予定。旧称は「三の丸尚蔵館」
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概要
- 1989年(昭和64年)昭和天皇が崩御されると、皇室財産の整理が行われた。
皇室財産は課税対象で、昭和天皇崩御の際には香淳皇后が配偶者控除を受け、長男の第125代天皇が全額を支払われている。
国庫寄贈品
- この時に「皇室御物」と呼ばれた古美術品は、一部の御由緒物を除いた美術品類約3,180件(約6,000点)が平成元年(1989年)6月、皇室より国に寄贈された。
- これらの国有財産となった美術品類を、適切な環境で保存研究し一般に公開する目的をもって、皇居東御苑内に平成4年(1992年)9月に「三の丸尚蔵館」が建設され同年11月3日に開館した。
- 計画当初は保存研究を主目的とした「収蔵庫」として建設を計画し、収蔵品の公開については博物館・美術館への貸出等を行って展示することを検討していたが、皇室の意向により三の丸尚蔵館内に展示室を設けることになった。
- 現在の建物は鉄筋2階建てで総床面積は1,760平方メートル。うち展示スペースは1階部分に160平方メートルあり、収蔵庫は980平方メートル。
これは、当初当館が美術品の保管施設として計画されたことによる。
御由緒物
- 「三種の神器」を始め、歴代天皇の肖像・宸筆、皇室の儀式に用いる屏風や刀剣類など、皇室にゆかりの深い品は皇室経済法第7条により、「御由緒物」として引き続き皇室の私有財産とみなされた。
第七条 皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。(皇室経済法)
国宝指定
- 基本的に天皇家所蔵のいわゆる御物は、慣例的に国宝を含む重要文化財指定を受けてこなかった。しかしこの三の丸尚蔵館収蔵品については、宮内庁の有識者会議が「価値を分かりやすく示すべきだ」と提言したのを受けて、文化財保護法に基づく国宝などの指定を検討していた。
- 2021年7月16日文化審議会(佐藤信会長)は、絵画「蒙古襲来絵詞」、「唐獅子図屏風」(狩野永徳)、「春日権現験記絵」(高階隆兼)、「動植綵絵」(伊藤若冲)、書跡「屏風土代」(小野道風)の5点を国宝指定するよう文部科学大臣に答申した。
収蔵品
- 【平成元年(1989年)6月】:昭和天皇崩御後の皇室美術品類約3,180件(約6,300点)が、皇室より国に寄贈される。
- 【平成8年(1996年)10月】:故秩父宮妃のご遺贈品が寄贈される。
- 【平成13年(2001年)4月】:香淳皇后のご遺品が寄贈される。
- 【平成17年(2005年)10月】:故高松宮妃のご遺贈品が寄贈される。
- 【平成26年(2014年)3月】:三笠宮家のご寄贈品が寄贈される。
刀剣類
- 若狭正宗
- [旧皇室御物] 刀 無銘 正宗
- 京極正宗
- [旧皇室御物] 短刀 銘 正宗
- 浮田志津
- [旧皇室御物] 短刀 無銘 志津
- 長船光忠
- 太刀 銘 備前国長船光忠。1933年岩崎小弥太から献上。
- 正家
- 太刀 銘 正家
- 行光
- 短刀 銘 行光
建替え計画
- 2018年6月、この「三の丸尚蔵館」についての建替え計画の予定があることが発表された。
- それによれば、展示スペースが手狭であること、また収蔵品の増加が見込まれることから収蔵専用の施設を建造する準備を進めてきたが、この計画では収蔵場所と展示スペースが離れるために貴重な美術品の移動にリスクがある点や展示スペースがそれほど広がらない点が問題視され、現在の三の丸尚蔵館の建替えが最適であるという意見が有識者懇談会から出されたという。
- そこで新たに地上3階、地下1階構成の施設を新造することにより、展示スペースを現在の8倍程度、収蔵スペースも4倍程度に拡充する計画を予定している。これにより、一度に展示できる作品の数も増加する他、展示品入れ替えのための休館もなくなる予定だという。
- 宮内庁では今後、来年度予算の概算要求に向け、新施設の具体的な設計を進めるという。
- 2023年の報道発表時は約80億円。
経緯
- 【1992年9月】:「三の丸尚蔵館」が建設され同年11月3日に開館した。
鉄筋2階建てで総床面積は1,760平方メートル。うち展示スペースは1階部分に160平方メートルあり、収蔵庫は980平方メートル。
2023年の報道発表時は、1階には合わせて690平方メートルの2つの展示室があり、2階と3階には、8つの収蔵庫と収蔵品を修復する作業室などがあるとされている。 - 【2014年8月】:宮内庁が、東御苑に新たに新館を建設する構想を検討していることが明らかになる。
- 【2015年12月】:三の丸尚蔵館の改修と新館建設の基本構想がまとまる。
- 【2016年1月】:基本構想の公表。
総床面積は既存部分の約3倍となる4,800平方メートル、展示スペースは360平方メートル、収蔵庫は約1,800平方メートルに拡張される。この時点では、皇宮警察本部西側に建設する予定だった。2022年度の完成予定。 - 【2018年6月】:建替え計画の発表。
新たな施設は地上3階、地下1階。展示スペースを現在の8倍程度、収蔵スペースも4倍程度に拡充する計画を予定 - 【2019年11月】:着工。
- 【2023年1月】:Ⅰ期棟完成。
- 【2023年3月】:同年11月を予定しているⅠ期棟開館に向けた報道公開。RC一部SRC造地下1階地上3階建て延べ約7700㎡。免震構造を採用している。高さは21.48m。有識者懇談会の意見をデザインに反映し、皇居に見られる「ひし形」のモチーフを施設の随所に採用している。
- 【2023年10月】:10月30日に新装開館式典。11月3日から順次8件の国宝を含む名品を公開していく予定。
- 【2023年11月】:先に完成した部分が正式開館を迎えた。この時点で収蔵品はおよそ6100件、2万点にのぼる。来年6月まで4期に分けて開かれる開館記念展では、鎌倉時代の軍記絵「蒙古襲来絵詞」や、江戸時代に活躍した絵師伊藤若冲の代表作「動植綵絵」など、収蔵されている国宝8件のうち6件が段階的に展示される。観覧にはオンライン予約が必要で、年齢などに応じて一般は1000円、大学生は500円の入館料がかかる。
- 【2026年度】:2025年完成予定だったが、2023年3月の報道公開時に、全面開館は令和8年(2026年)度を予定と発表された。令和8年度に新たな建物がすべて完成すると、収蔵スペースはこれまでのおよそ4倍の4000平方メートル程度に、展示スペースはおよそ8倍の1300平方メートル程度になる予定。皇居・東御苑には、全面開館に間に合うよう、およそ3000平方メートルの休憩所が整備される予定で、皇居内では初めてとなるカフェのほか、売店やオープンテラスなどが併設され、皇室の活動や皇居について紹介するコーナーも設けられる。
国立文化財機構への移管
- 2022年6月、従来宮内庁が管理してきた「三の丸尚蔵館」について、建て替え工事後に独立行政法人国立文化財機構に移管されることが発表された。建物や収蔵品のほか、学芸員などの職員も移されることになり、これまで無料だった展示スペースの有料化や、建物の新たな名称についても検討が進められるという。
- 移管は2023年10月予定。名称は「皇居三の丸尚蔵館」と決まった。
関連項目
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