御由緒物
御由緒物(ごゆいしょぶつ)
皇位とともに伝わるべき由緒ある物
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概要
- 御由緒物とは、日本国の天皇に皇位とともに受け継がれる由緒ある宝物のことであり、これをいわゆる「御由緒物」と呼ぶ。
経緯
- 「御由緒物」という概念ができたのは、第二次世界大戦後の現行憲法下においてである。
- 日本国憲法規定に基づき天皇の所有物(いわゆる御物)は国有財産とみなされるようになった。
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
(日本国憲法)
- しかし相続税法および皇室経済法において特例が規定されており、これが「御由緒物」と呼ばれるものとなっている。
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
(相続税法)第七条 皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。
(皇室経済法)
なお、皇居、葉山・那須御用邸などの皇室用財産は、国有財産であるところから相続税の課税対象とはならない。皇室用財産 - 宮内庁
分類
- この「御由緒物」の対象となる物品については事前に特定されていたわけではなく、その区分は昭和天皇崩御後の平成元年(1989年)にはじめて行われた。
由緒ある物として確定をしたのは昨年のいわゆる先帝陛下(昭和天皇)の崩御に伴いまして御相続関係をどうするかということを明確にしなければならない時点で、由緒ある物の範囲というものを確定いたしたわけでございます。
参議院会議録情報 第118回国会 地方行政委員会 第2号
- この際に天皇御物とされてきた美術品類約4600件あまりが次の3つに分類され、大半の3180件が国の所有となり国庫へと移された。※侍従日記ではA・B・C分類で記述されている。
- 御由緒物:580件
「皇位とともに伝わるべき由緒ある物一覧」(いわゆる「御物調書」所載)
※相続税法の対象外。下記「2019年のケース」参照 - 第125代天皇と香淳皇太后が相続した私有財産:約800件
引き続き「御物」とされたもの
※相続税法の対象 - 国有財産:3180件
三の丸尚蔵館へ。「三の丸尚蔵館収蔵品総目録」
- また残る半分強ほどが天皇家の私物(私有財産)として第125代天皇と香淳皇太后に相続され、さらに残り半分弱は「御由緒物」として皇位とともに皇嗣(天皇)に受け継がれた。
第125代天皇と香淳皇太后に相続された私有財産については相続税法の対象となっており、これに関して、第125代天皇は株式などを売却の上で四億二千八百万円の相続税を支払っている。
香淳皇太后もほぼ同額の相続税を支払ったと思われるが、香淳皇太后の崩御時にはその相続税が2億円を下回っていたことがわかっている。相続税の制度上、代を経るごとに皇室の私有財産が減少していくことになり国会においても幾度も議論されているが、天皇制の是非を含め結論は出ていない。
簡単に言えば、2が一般で言う私物(課税対象)、1は天皇という”位”に付随して相続するものであって純粋な意味では私物ではない(私物ではないので非課税)。3は国有財産(宮内庁管理)。
2019年のケース
- 2019年に第125代天皇より今上天皇(徳仁)へ受け継がれる際には、相続ではなく贈与という形式で譲渡された。
- そのため、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号)」において「御由緒物」が贈与税の非課税対象であることを規定している。
(贈与税の非課税等)
第七条 第二条の規定により皇位の継承があった場合において皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さない。
2 前項の規定により贈与税を課さないこととされた物については、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第十九条第一項の規定は、適用しない。
- 令和元年(2019年)5月1日の午前に行われた剣璽等承継の儀で、剣璽を始めとする壷切ノ剣、宮中三殿などの御由緒物、および国璽、御璽が、今上天皇(徳仁)に受け継がれた。
「宮中三殿」とは、皇居内にある賢所(かしこどころ、けんしょ)、皇霊殿(こうれいでん)、神殿(しんでん)の総称。御由緒物に含まれる建造物であり、固定資産税の対象外となっている。
「御由緒物」に含まれる物
- いわゆる三種の神器のほか、皇嗣に相伝される壷切ノ剣などが御由緒物である。
私どもがこれに当たるものとして特定をいたしましたものは、いわゆる三種の神器、それからいわゆる宮中三殿、壷切の御剣あるいは東山御文庫の尚蔵物等約六百点と、こういうことでございまして、これは一つ一つにつきましてきちんと特定をいたしておるわけでございます。
参議院会議録情報 第118回国会 地方行政委員会 第2号
- この御由緒物については、いわゆる「御物調書」として知られる文書で目録が作成されている。
由緒ある物のリストというものはきちんとできておりまして、特定をいたしております。ただ、その教え方が非常にいろいろ複雑でございますので、例えば一箱の中に何十点も入っているというようなものがあったり、いろいろな計算の方法がありますので、私どもは約六百点というふうに言っておるわけでございますが、特定をいたしておることは間違いございません。
由緒ある物を確定をいたしました段階で、これは報道機関等の求めにも応じまして、これこれのものであるということをおおむね、その中身の全リストではございませんが、概要は公表をいたしております。
参議院会議録情報 第118回国会 地方行政委員会 第2号
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