武辺咄聞書に登場する名物兜


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 武辺咄聞書に登場する名物兜(ぶへんばなしききがき)

  • 国枝清軒編纂(延宝八年刊)

美濃国菩提城主竹中半兵衛重治か甲は一の谷と云。明智左馬助か甲は二の谷と云。但し一の谷に並たる名物成により二の谷と云。柴田伊賀守勝豊か甲は鉄蓋か峰と云。是は一の谷より手上也と云事也。

惣て名物の甲は

  • 浅野若狭守か小水牛の甲
  • 原隠岐守か十王頭
  • 日根野織部か唐冠
  • 黒田長政か大水牛  ※脇立の兜、福岡市博物館所蔵
  • 福嶋正則か四段鹿の角
  • 本多中書か忠信か甲
  • 秀吉公の八日の月
  • 蒲生氏郷か鯰尾
  • 伏木久内かわり蛤
  • 細川忠興(三斎)の山鳥
  • 武田信玄の諏訪法性
  • 竹中半兵衛か一の谷
  • 台徳院殿の御召角頭巾の御甲
  • 柴田伊賀守か鉄蓋か嶺
  • 明智左馬助か二の谷
  • 矢田作十郎か鯉の甲
    是等は天下に無隠名物とも也。

加えて、

  • 藤清正の長烏帽子
  • 藤堂新七か帽子
    是等なとも世に名高き甲也。

日根野織部か唐冠の甲は立物は鐘馗耳弐尺五寸の脇立也。但右の耳の立物は半分折かゝりたるやうにする也。是は太刀打にかまふ故也。

 その他現存兜

上杉謙信所用
飯綱権現前立兜(鉄錆地塗六十二枚張兜)。色々縅腹巻に付属する。瑞雲に乗った飯縄権現。重要文化財上杉神社所蔵
上杉謙信所用
三宝荒神形兜。朱皺漆塗紫糸素懸縅具足に付属する。重要文化財。仙台市博物館所蔵
上杉景勝所用
阿吽瑞鳥前立付兜(六十二間星兜)。浅葱糸威黒皺韋包板物二枚胴具足に付属する。慶長5年(1600年)家康を迎え撃つべく白河へ出陣した際に着用したと伝わる。宮坂考古館所蔵
伊達政宗所用
黒漆塗六十二間筋兜。黒漆五枚胴具足に付属する。細長い弦月の前立。仙台市博物館所蔵
片倉重綱所用
愛宕権現神札前立金箔押六十二間筋兜。愛宕権現の札は片倉家の合印。黒漆五枚胴具足に付属。仙台市博物館所蔵
小早川秀秋所用
後立の兜。紫糸縅二枚胴具足に付随するもの。靖国神社遊就館所蔵
真田昌幸所用
鉄地突盔形鉢。啄木糸威伊予札胴具足に付属する。上田市立博物館所蔵
真田信政所用
唐冠形兜。信政所用の黒糸毛引縅二枚胴具足に付属するもの。真田宝物館所蔵
徳川家康所蔵
黒漆塗大黒頭巾兜。伊予札黒糸素懸威胴丸具足(歯朶具足)に付属する。重要文化財。大和の甲冑師岩井与左衛門作。重要文化財。久能山東照宮所蔵
徳川家康所蔵
金泥三枚張頭形兜。金陀美具足に付属する。重要文化財。久能山東照宮所蔵
徳川家康所蔵
水牛角脇立熊毛植頭形兜。熊毛植黒糸威具足に付属する。寛政3年(1791年)の「東照宮御譲道具帳」に「東照宮御召」と書かれている。重要文化財徳川美術館所蔵
本多忠勝所用
黒漆塗十二枚筋兜。黒糸威胴丸具足に付属する。重要文化財。個人蔵
井伊直政所用
朱漆塗仏二枚胴具足。関ヶ原で着用したと伝わる。彦根城博物館所蔵
井伊直孝所用
金色の大天衝が特徴の兜。井伊家では天衝を脇立とするのは当主にのみ許される(家臣は前立)。朱漆塗燻韋威縫延腰取二枚胴具足。彦根城博物館所蔵
井伊直定所用
井伊家8代。金色の大天衝と菖蒲を象った立物。彦根城博物館所蔵
鳥居元忠所用
椎実形兜。鳥居元忠所用の鉄錆地椎実形兜。精忠神社所蔵、壬生町立歴史資料館保存
丹羽氏次所用
氏次は尾張岩崎城主の丹羽氏勝の子。三河伊保藩初代藩主。鉄地南蛮帽子形兜。萌黄糸威錆塗二枚胴具足に付属する。個人蔵、大阪城天守閣保存
豊臣秀吉所用
黒熊植金箔軍配兜。銀伊予札白糸素懸威胴丸具足に付属する。天正18年(1590年)の奥州仕置の際に、政宗が秀吉を宇都宮で出迎えた時に拝領したもの。重要文化財。仙台市博物館所蔵
浅野長政所用
黒漆塗桃形兜。茶糸威桶側五枚胴具足に付属する。大阪城天守閣所蔵
蜂須賀至鎮所用
鉄張茶漆塗烏帽子形兜。革包丸龍文二枚胴童具足に付属する。徳島市立徳島城博物館所蔵
加藤嘉明所用
大黒頭巾鳥毛飾兜。黒漆塗仏胴具足に付属する。松山城天守閣所蔵
黒田孝高所用
朱漆塗合子形兜。黒糸威胴丸具足に付属する。貞享5年(1688年)に3代藩主黒田光之が官兵衛所用の兜を模して作らせたもの。胴は桃山時代。福岡市博物館所蔵
黒田長政所用
銀箔押一の谷形兜。黒糸縅胴丸具足に付属する。福岡市博物館所蔵
後藤基次所用
熊毛総髪形兜。日月竜文蒔絵仏胴具足に付属する。大阪城天守閣所蔵

 翁草

  • 翁草に登場する名物
  • 細川三斎に奉公せし老人、浪人して京に在りしが物語に云ふ、播州一の谷二の谷と云ふ山並び峠てり、一の谷の峠を鐵蓋が峰と云ふ、美濃國菩提城主竹中半兵衛重治、一の谷と云ふ冑を着せり、明智左馬介が冑は二の谷と號す、一の谷に並びたる名物故に斯く云へり、又柴田伊賀守勝豊が冑は鐵蓋が峰と云、一の谷より上と云ふ心なり總じて名物冑は、
    浦野若狭守 小水牛
    黒田長政 大水牛
    原讃岐守 十王頭
    日根野織部正 唐冠
    福島正則 四俣鹿角
    本多忠勝 忠信冑
    秀忠公 八日月
    蒲生氏郷 鯰尾
    伏木文内 わり貝
    細川忠興 山鳥
    武田信玄 諏訪法性
    竹中半兵衛 一の谷
    明智左馬介 二の谷
    柴田伊賀守 鐵蓋峰
    秀忠公 角頭巾
    矢田作十郎 鯉魚
    是皆天下の名物なり、また加藤清正の長烏帽子、藤堂新七郎が鋩子も名高き冑なりと語れり、津田長門入道常廣物語に、日根野織部が唐冠の冑は立物鐵馗、耳は二尺五寸の脇立なり但右の耳は半分より打折たる様にする、是は太刀打に構ふ故なりとぞ

 常山紀談

  • 常山紀談に登場する名物

    加藤嘉明の冑は形を富士山に造りなして、名をも則富士山といふ、具足の胸に天人の雲に乗りたるを蒔絵にしたり、竹中重治が冑は一の谷、明智秀俊が冑は二の谷といふ、攝州一の谷二の谷相並べり、又柴田伊賀守勝豊が冑は鐵蓋が峰といふ、是は一の谷より高く、峙たる山なれば斯名付しとかや、此餘浦野若狭守が小水牛、黒田長政の大水牛、日根野が唐冠の冑、原隠岐守が十王頭、福島正則の四また鹿の角、本多忠勝の佐藤四郎が冑、蒲生氏郷の銀の鯰尾、伏木久内がわり蛤、武田信玄の諏訪法性、秀吉の八日の月、加藤清正の長烏帽子、矢田作十郎が鯉の冑、藤堂新七が帽子などいへる多し、細川忠興の山鳥の尾の冑といへるも名高し、關ヶ原の軍に忠興かの山鳥の尾の冑を着、銀の天衝の指物なりしに、遥に見て唯舞鶴のやうに有りけるを、東照宮冑と指物と映あひて面白しとて乞得させ給ひ、台徳院殿に参らせらる。


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