布都御魂
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布都御魂(ふつのみたま)
日本三霊剣のひとつ
布都御魂剣
- 葦原仲原を平定していた
建御雷命 の所有していた剣で、命 の分身である剣とされる。
神武東征伝説
- 伝承によれば、神武東征のおり、
長髄彦 の抵抗にあい熊野山中を彷徨っていた際、高倉下 が神武天皇(神倭伊波礼琵古命 、神日本磐余彦尊 )に献上した剣であるという。 - この高倉下は、この剣を次のような経緯で入手したと述べる。
天照大神と
高木神 が、葦原中国が騒がしいので建御雷命 を遣わそうとしたところ、建御雷神は「自分がいかなくとも、国を平定した剣があるのでそれを降せばよい」と述べ、高倉下に「この剣を高倉下の倉に落とし入れることにしよう。お前は朝目覚めたら、天つ神の御子(神武天皇)に献上しろ」といったという
- 夢から覚めた高倉下は、夢の通りこの剣を見つけだし、早速神武天皇に献上したところ、大和征服に大いなる力を発揮したという。
佐土布津神 とも。- 石上神剣、
佐士布都神 、甕布都神
石上神宮蔵
布都御魂剣
85cm
石上神宮所蔵(奈良県天理市、御神体)
- この石上神宮所蔵の剣は、内反り(通常の剣とは逆に刃の内側に反っている)で片刃の全長85cmの鉄刀であるという。
御神体
- 崇神天皇の代に物部氏の伊香色雄命(いかがしこおのみこと)の手により石上神宮(奈良県天理市)に移され、御神体となったという。
- いつの時代か御神体である剣は、拝殿裏手の禁足地に埋められた。
- 明治7年(1874年)に大宮司である菅政友は禁足地の発掘を教部省に申請、許可されたため同年8月20日に発掘したところ、刃長二尺二寸二分の平造り、少し内反り環頭の太刀が出てきた。
- これを内務省に提出し明治天皇の叡覧に供したのち、ふたたび本殿内陣に奉安され御神体として祭られた。
菅政友(すが まさとも)
菅政友は水戸藩士。彰考館員となり、豊田天功・藤田東湖に学び国史に通じた。明治維新後に石上神宮宮司となっている。
模造刀
- この際に、月山貞一(初代)が作刀した布都御魂剣の複製2振が本殿中陣に奉安されたという。
- また同時にそっくりな木型が造られ、それが皇太后大夫であった故香川敬三伯爵家にあった。
- のちにこれを元に、大正5年(1916年)には宮本包則、同13年には近江介胤明が模造刀をつくっている。後者は明治神宮に奉納された。
鹿島神宮蔵
平国剣
(韴霊剣)
国宝
鹿島神宮所蔵
韴霊剣
- 「布都御魂」とされる剣は全国に数本あり、なかでも武甕槌神を祭神とする鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)に伝わるものは「平国剣」(くにむけのつるぎ、ことむけのつるぎ)とも呼ばれるもので、国宝指定を受けている。
- 「鹿島神宮伝記」に、垂仁天皇が大和の石上神宮に太刀千振りを奉納されたとき、韴霊剣は鹿島神宮へ返還されたという。「神皇正統記」でも、韴霊剣は始め石上神宮、のち鹿島神宮に移ったとする。
江戸時代
- 8代将軍吉宗がこれを見たいというので、久世大和守が鹿島神宮に問い合わせるが、神宮側では御神体であるためといって断った。そこで寺社奉行所の与力を派遣すると、御神体の移動は深夜暗闇の中で行う慣例になっていると偽り、手探りで調べさせた。
- 幕末に水戸の徳川斉昭が霊剣の模造をしたいと申入れさせるが、この時も断っている。
大正
- しかし実際にはそれほど神格視していなかったのか、大正になって国宝調査委員が下調べにいったところ、収蔵庫のガラスの中に馬の像などとともに置かれていたという。委員たちが呆れ、刀箱の中に入れ厳重に保管するよう注意したほどであったという。
諸記録
- なお台覧は断っているものの、「武家名目抄」の編集者中山信名はこれを見て記録している。それによれば、刃長七尺五寸六分、中心の長さ一尺三寸三分、鎺元の身幅二寸一分。
- 大正3年(1914年)に高瀬羽皐が拝見した時の記録では、刃長七尺四寸、中心の長さ一尺八分、鎺元の身幅二寸一分となっている。
- 昭和29年(1954年)に砥に出され、翌年国宝指定された。
- この時の計測では、刃長は七尺三寸九分、中心の長さは一尺七分、鎺元の身幅一寸三分八厘強。
- 剣形は切刃作りの直刃。地鉄に板目肌の詰まった部分と、ひどく荒れた部分がある。このことから、中心をのぞいても少なくとも4ヶ所ぐらいで継ぎ合わせたものとされる。
- 切先は激しい魳切先になり、鋩子は掃きかける。中心はうぶで、目釘孔は中心尻に1個穿たれている。
杜本神社蔵
- 河内古市(現大阪府羽曳野市駒ケ谷)の杜本神社(もりもとじんじゃ)にも韴霊剣と伝承された剣が二振りある。
- ただしこれを十六家蔵としたものもある。
十六山家蔵之品々
韴霛 各長壹尺七寸六分半
(河内名所図会)
- 片刃と両刃の2種類あり、長さはともに一尺七寸六分五厘。
- 形式からすると、鹿島神宮や石上神宮よりも古くなる。
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