古今名物類聚
古今名物類聚(ここんめいぶつるいじゅう)
江戸後期の茶器の名器を集めた書
全一八巻
陶斎尚古老人
「古今名物類聚」は出雲松江藩主の松平不昧による著作。「陶斎尚古老人」とは松平不昧のこと。
名物茶器を集めて分類した内容で、現在に至るまで茶器の評価基準を決定づけた。
概要
越前松平家(結城秀康四男直政流)の分かれ、出雲松江藩七代松平治郷が、文化三年(1806)隠居後、不昧と号し名物道具蒐集研究に耽り「古今名物類聚」にまとめた。
茶碗・花入れ・書画など茶会に使われる茶器について、宝物之部、大名物之部、中興名物之部、名物並之部、上之部、中之部、下之部の7つに格付けし、伝来や購入年、当時における評価額、購入金額まで記録している。
一般に茶器の名物を「大名物」と「中興名物」とする分類は、不昧が「古今名物類聚」で示した基準が元になっているとされる。
寛政二年(1790)から寛政九年(1797)にかけ江戸須原屋市兵衛から四回にわけて刊行された。
序文
陶斎尚古老人誌
凡例
凡名物と稱するは。慈照相公 (足利義政)茶道翫器 にすかせ給ひ、東山の別業に茶會をまうけ。古今の名畫。妙墨。珍器。寶壺の類を聚 め給ひ。なを當時の數寄者。能阿彌。相阿彌に仰せありて。彼此 にもとめさせられ。各其器の名と儥とを定めしめ給ふ次て。信長。秀吉の二公も。亦茶道に好せ給ひ。利休。宗及などに仰せて。名を命し儥 をも定めしめらる。後世是等の器を稱して名物といふ。其後小堀遠州公古器を愛し給ひ。藤四郎以下後窰 國焼 等のうちにも。古瀬戸。唐物にもまされる出來あれとも。世に用ひられさるを惜み給ひ。それかなかにもすくれたるを撰み。夫ゝに名を銘せられたるより。世にもてはやす事とはなれり。今是を中興名物と稱す。それよりしてのち。古代の名物をは。大名物と唱る之
一、大名物は。多く
公 の御物 となり。またはやんことなき方の納殿にこめられたれは。たやすく世の人の見る事を得へきものにあらす。さるによりてしはらくおきぬ。然とも初め其器の諸家にありたる時の傳記。公へ奉りたる事跡。ならひに圖記等は。求め得るにまかせて。次編に出すへし。大名物を後にして。中興名物をさきとするは。今世に用ゆる所を専らとすれはなり。
一、小壷を焼とは。元祖藤四郎をもつて鼻祖とす。藤四郎本名加藤四郎左衛門(加藤景正)といふ。藤四郎は上下をはふきて呼たるなるべし。
後堀河帝貞應二年。永平寺の開山道元禪師に隋て入唐し唐土 に在る事五年。陶器の法を傳得て。安貞元年八月歸朝す。唐土の土と藥とを携歸りて、初て尾州瓶子窰にて焼たるを唐物と稱す。
(略)
一、此書の次編は
大名物 茶碗香合 織物 名物雑記
以上四編なり。校合の全にしたかちて梓行すへし
一、大名物。中古名物のうちにも。回録 等によりて名のみ残りたるもあり。幸にして關記に形の残りたるもあり。今此編を著す大意は。世に存する所の名器。もし不思議の災にかゝりて。其物は烏有となるとも。千歳の後に。名と物とのかたしろを残さむかため之。然とも大名物はさらなり。何れ諸家の祕藏する所なれは。悉くみるによしなし。もし。みさるところの器の主。其器の名を不朽に傳へ。且天下と樂しみをおなしうすろの志を起し給ひて。其藏す所をおします。それか圖をうつし。其大小分寸ならひに其修覆等をしるして。申椒堂(須原屋市兵衛)かもとにおくり給はゝ。我輩の幸のみならす其器の幸ならむ。且大名物は天下古今の名物にて一人一家一世の名物ならねは。四方の數寄人 等。力をともにし給はむ事を希 ふとになむ。
于時
天明丁未之孟春
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国立国会図書館デジタルコレクション
- 寛政3年(1791年)版 須原屋市兵衛
- 昭和14年(1939年)版 日本古典全集刊行会 ※翻刻活字本
関連項目
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