野田繁慶(刀工)


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 野田繁慶(のだはんけい)

江戸初期の刀工
新刀最上作
野田清尭、小野繁慶

 概要

  • 俗称野田善四郎。
  • 本姓は小野氏。
  • ハンケイと呼ばれる。
  • 作風は相州上位に似る。
  • 棒樋を彫ったものがあるが、ほとんどのものでは彫りがない。年紀銘もない。

 生涯

  • 三河で生まれ、のち江戸に出て幕府のお抱え鉄砲工胝(あかがり)惣八郎に入門し、清堯(きよたか)と名乗る。「野田善清尭」「日本善清尭」
    胝惣八郎は、本性日比。もとは伊賀の住人で滝川一益の家臣となり、のち家康に仕え江戸に移った際に住地を拝領。のち諸方鉄砲差図役となり、その住地は鉄砲町と呼ばれる。寒いさなかでも鉄砲製造に勤しんだために手はあかぎれだらけで、家康から「胝(あかぎれ)」の名字を頂戴する。のちアカガリと呼ぶようになったという。
  • 家康が駿府に隠遁する時に胝惣八郎を召しつれようとするが、惣八郎は年齢を理由に辞退し、代わりに清堯(繁慶)を推薦した。まもなく全国の大社へ鉄砲奉納を計画する。
  • 駿河に移ると、鉄砲のほか「繁慶」の名前で刀も作り始めた。
  • 元和2年に家康がなくなると、武州八王子に住み、秀忠から千俵を受けて鍛刀したとも伝わる。のち鉄砲町に移る。
  • 作刀の師としては、相州綱広や、島田義助。あるいは越前康継の相槌を務めるうちに習得したともいう。

 正宗極め

  • あるとき秀忠の面前において、繁慶の打った刀を本阿弥に見せたところ(当時としては)現代刀にも関わらず「相州正宗でござろう。」と鑑定した。面白がった秀忠が繁慶を呼び出しそのように伝えると、繁慶は「情けなや。正宗ごときに極められ無念」と憤慨したという。
  • 明治期に繁慶の刀を所持していた大久保一翁本阿弥長識に見せたところ「正宗でございましょう」といった。一翁が「バカ言っちゃいけない、これは繁慶だよ」というと、「これは正宗を模したものですから繁慶正宗というべきでしょう」と返したという。

 

  • 銘は、初期の頃は「小野繁慶」「野田善清堯」「日本善清堯」「野田善四郎清堯」。
  • 【鉄砲銘】
    • 初期の鉄砲での銘は「清堯」である。
    • 慶長16年の群馬一之宮貫前神社奉納、慶長17年出雲日御碕神社奉納、慶長18年大坂住吉大社へ将軍秀忠が奉納したものなどが残る。
  • 【刀剣銘】
    • 銘は、木彫のように彫り込まれている。
    • 刀剣では「繁慶」の二字銘になり晩年に至る。繁の右上の「攵」が、中期の作では「ロ又」の字形、晩年の作では「ル又」に読まれる。
    • 住吉大社、日御碕神社、和歌山金剛三昧院などへの奉納刀が残る。
    • 良業物で、古来偽名が多い。

 日本三刀

  • 刃長九寸一分の短刀が、虎徹の短刀、康継の脇差とともに日本三刀に選ばれている。平造り、真の棟、差表の腰樋のなかに松喰い鉉と亀の浮き彫り。裏に梵字。

 著名作

 鉄砲

  • 清堯作であると確実視される鉄砲は16挺のみが現存し、うち水戸徳川家で5挺を所蔵するという。
火縄銃
釼鉄筒。徳川家康所用。慶長十八年。水戸徳川ミュージアム所蔵
火縄銃
釼鉄筒。徳川家康所用。慶長二十年。水戸徳川ミュージアム所蔵
火縄銃
三匁五分筒。銘「完粟鋳鍛三重張 慶長十六年十月吉日 日本清堯(花押)」。全長146cm。徳川家康所用。駿府御分物として初代義直に伝えられた。徳川美術館所蔵
火縄銃
銘「完粟鋳鍛三重張 慶長十六年十一月吉日 日本清堯」。全長148.5cm。徳川家康所用。3代将軍家光より拝領。香川県立ミュージアム所蔵
火縄銃
銘「清堯」全長131.9cm。徳川家康所用。3代将軍家光より拝領。香川県立ミュージアム所蔵
火縄銃
二挺。付属品共。徳川家康所用。慶長十七年、十八年。重要文化財。久能山東照宮博物館蔵
鉄砲
清堯作。昭和37年(1962年)6月12日島根県指定文化財。日御碕神社所蔵
鉄砲
銘「野田善清尭」。昭和53年(1978年)8月4日大阪府指定文化財。住吉大社所蔵

 刀剣

「下條繁慶」
刀 銘「繁慶」鎬造、三ッ棟、反浅く、中鋒。長70cm、反り2cm。昭和36年(1961年)2月17日重要文化財指定。同作中の白眉。東京国立博物館文化庁分室所蔵
「彫抜繁慶」
短刀 銘「繁慶」帖31.85cm。目釘孔2個。倶利伽羅竜の欄干透し彫りが入る。
銘「小野繁慶/奉納接州住吉大明神御宝前」。昭和35年(1960年)6月9日重要文化財指定。大阪住吉大社所蔵
短刀
銘「繁慶」長25.9cm、反り0.7cm。平造、真の棟。昭和35年(1960年)8月23日岡山県指定工芸品。個人蔵
銘「繁慶」長2尺2寸7分(68.8cm)、反り四分(1.2cm)。昭和29年(1954年)10月23日埼玉県指定文化財。個人蔵
銘「奉納出雲国日御碕霊神/小野繁慶」。昭和15年(1940年)2月13日重要美術品指定。出雲市日御碕神社所蔵
雌雄剣
刀 銘「繁慶」二口。刃長は雄剣が二尺四寸五分、雌剣は二尺三寸六分。寛永元年(1624年)8月に金剛三昧院に奉納したもの。大正4年(1915年)3月26日重要文化財指定。金剛三昧院所蔵、高野山霊宝館
銘「繁慶」昭和14年(1939年)9月6日重要美術品指定、池貝庄太郎氏所持。
銘「繁慶」昭和11年(1936年)9月12日重要美術品認定。金森一吉氏蔵。

 関連項目


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