観智院本銘尽


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 観智院本銘尽(かんちいんほんめいづくし)

銘尽の写本
観智院銘尽

Table of Contents

 概要

  • 鎌倉時代正和5年(1316年)に記された、我が国における現存最古の刀剣書。
  • 原本を「正和銘尽(しょうわめいづくし)」、現存する写本を観智院が旧蔵していたことから「観智院本銘尽」と呼ぶ。
    原本の「正和銘尽」は現存せず。写本については、観智院所蔵の写本を元に写したものがいくつかの版があり、そのうちいくつかが残る。
  • 応永30年(1423年)に転写されたものが現存し国会図書館蔵。

 観智院(かんちいん)とは

  • 観智院とは京都東寺(教王護国寺)の塔頭寺院のひとつ。
  • 塔頭寺院であるが、別格本山となっている。
  • この観智院が保管していた「銘尽」の写本であるため、「観智院本銘尽」と呼ばれる。

 観智院本概要

  • 美濃紙四十五紙よりなる和装冊子本。
  • 本文中に、鎌倉時代の年号である「正和五年(1316)まではゝゝ年なり」の記載があり鎌倉末期ごろの成立とみられる。
  • 全45丁のうち、42丁目の裏に以下文言が書かれている。

    以南洞院御秘蔵本令誂行蔵坊幸順写之事 應永卅年十二月廿一日

  • 終わりの三丁は「五畿七道の国尽」(国名一覧)になっている。
  • 裏表紙には次のように記されている。

    京都東寺子院勧智院所伝
    刀剣鑑定之書
    応永三十年之古写 本書正和五年著作
    勧智院法印権僧正住寶所貺
    津田葛根蔵

  • 観智院本の原本は、観智院から津田葛根、津田清四、松平賴平子爵、国会図書館と伝来した。

 来歴

  • 長らく観智院で保管されていたが、幕末ごろの法印権僧正住宝が、愛刀家であった津田葛根(つだくずね、次右衛門)に贈った。
    津田葛根は若狭小浜藩士。
  • 津田葛根が所持していた文政12年(1829年)、若狭小浜藩の国学者伴信友がこれを借用し写している。※伴信友写本
  • その後明治ごろには子孫である津田清四が所持していたが、明治41年(1908年)に売りに出され、本屋を介して松平頼平子爵の所蔵となった。
  • その2年後の明治43年(1910年)1月、松平子爵は蔵本をすべて売却したため、その大部分は帝室図書館(現、国立国会図書館)と静嘉堂文庫が買い入れることとなったが、この観智院本については国会図書館所蔵となっている。
  • 昭和14年(1939年)、国会図書館所蔵本に三矢宮松氏が解説を付け、便利堂から刊行されている。

 刊行本

 便利堂

昭和十四年便利堂刊行
観智院銘尽写本を編集したもの
重要文化財

  • 釈文序文

    この釈文は原文との対照繙読の便を思い、丁数、行数、字詰、倭仮名の使用、あて字すべて原文のままを移したが、さらに括弧を以て訓読を補註し、且つ句読点を施した。原文は応永の古写本で難読の箇所また少なからず、その読み方、刀剣用語訓読の補註並びに句読点等については、文学博士辻善之助氏、帝室林野局長官三矢宮松氏、文部省国宝調査嘱託本間順治氏、帝室博物館辻本直男氏の御示教に拠ったもので、本書刊行に関して多大の援助を賜った四氏に対し、衷心感謝の意を表する次第である。又多くの造字を必要とするこの印刷を引き受け少なからざる犠牲を忍ばれた便利堂の誠意に対しても、併せ記してその好意を謝するものである。

  • 奥書

    昭和十四年八月廿五日印刷
    昭和十四年九月十五日発行
    帝国図書館
    京都市中京区新町通竹屋町南
    印刷所 株式会社便利堂

 出版社不明本

 写本

 伴信友の写本

  • 国学者伴信友が文政12年(1829年)に写したもの。

    右剣工鑑定之書一巻応永卅年之古写本蓋正和之頃所撰也巻首缺逸且失題名所存四十五帋雖鑑定家所未曽見也云元所捜得於東寺中観智院古什物之筥底也津田葛根与院主住宝法印善文化中住宝出其書為什物員外之反故貊之葛根々々伝領珍之秘匿日久矣今于茲文政十二年乞借厥本偸閑雇眼鏡自親騰写文字素希異譌舛不尠悉随本不改弌字有剥爛蠧損頗若模九月五日功畢蔵以備攷古之一券 伴信友

  • この伴信友写本は、後に水戸烈公徳川斉昭の所蔵となる。巻頭に「潜龍閣蔵書部」の六字の大印が押されているというが、これは現在行方がわからない。

 「剣工古書」

 銘尽

  • 斐紙四十五紙よりなる冊子本で、冊子の終わりの方に「神代より当代まで上手之事」として四十二名の刀工が記されている。
    ※うち、舞草鍛冶と思しき名前は8名見受けられる。
  • 内容については「銘尽」の項参照

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