社格


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 社格(しゃかく)

神社を等級化する制度

Table of Contents

 制度の移り変わり

  • 神社を等級化する制度は、近代以前は「三代格式」により定められ、明治以後に太政官布告で大きく整備されたが、第二次大戦後に近代社格制度は廃止された。
  • 社格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。
  • 各制度を以下の順に見ていく。
  1. 近代以前(延喜式内社)
  2. 近代(官幣社)
  3. 第二次大戦後


 近代以前

  • 三代格式(弘仁格式、貞観格式、延喜格式)で定められる。
  • 現存するのは「延喜式」のみ。

 式内社(しきないしゃ)

  • 延喜式の巻九、巻十で神名帳(神社の一覧表)を載せている。
    • 本来「神名帳」とは、古代律令制における神祇官が作成した官社の一覧表を指し、官社帳ともいう。
  • 国・郡別に神社が羅列され、官幣・国幣の別、大社・小社の別と座数、幣帛を受ける祭祀の別を明記するのみで、各式内社の祭神名や由緒などの記載はない。
    • 「延喜式神名帳」とは、延喜式の成立当時の神名帳を掲載したものである。延喜式神名帳に記載された神社(式内社)は全国で2861社で、そこに鎮座する神の数は3132座である。
  • これらを「式内社」と呼ぶが、現在は消滅、または不明となっている神社も多い。

 式外社(しきげしゃ)

  • 当時すでに存在したが延喜式神名帳に記載がない神社を「式外社」という。
  • ただし式外社のうち六国史に名前が見える神社を国史見在社という。
  • 式外社には、朝廷の勢力範囲外の神社や、独自の勢力を持った神社(熊野那智大社など)、また、神仏習合により仏を祀る寺となった神社、僧侶が管理した神社(石清水八幡宮など)、正式な社殿がなかった神社などが含まれる。
  • 代表的な式外社には、石清水八幡宮(京都府八幡市)、大原野神社(京春日。京都市西京区)、吉田神社(京都市左京区)、祇園社(現、八坂神社)、北野神社(現、北野天満宮)、熊野那智大社、香椎宮(福岡市)、鹽竈神社(塩竈市)、須我神社(日本初之宮。島根県雲南市)、火守神社(島根県出雲市)、香良洲神社(三重県津市)、脇子八幡宮(富山県下新川郡)、飯名神社(つくば市)などがある。
    石清水八幡宮、祇園社など多くが「二十二社」に含まれているが、延喜式神名帳には記載されない。

 一宮(いちのみや)

  • 一宮とは、ある地域の中で最も社格の高いとされる神社のことである。一の宮・一之宮などとも書く。
  • 通常単に「一宮」といった場合は、令制国の一宮を指すことが多い。一宮の次に社格が高い神社を二宮、さらにその次を三宮のように呼び、更に一部の国では四宮以下が定められていた事例もある。
  • 通説では11世紀から12世紀にかけて成立したとされる。文献上における「一宮」称号の初見は、12世紀前半に成立したとされる『今昔物語』に書かれた「今ハ昔シ周防ノ国ノ一宮ニ、玉祖ノ大明神ト申ス神在ス」の記述とされる。
  • 選定基準を規定した文献資料は無いが、一宮には次のような一定の形式があるとしている。
  1. 原則的に令制国1国あたり1社を建前にした。
  2. 祭神には国津神系統の神が多く、開拓神として土地と深いつながりを持っており、地元民衆の篤い崇敬対象の神社から選定されたことを予測できる。
  3. 全て『延喜式神名帳』の式内社の中から選定された1社であるが、必ずしも名神大社に限られていない。(異説あり。後述の「変遷と争い」を参照。)
  4. 必ずしも神位の高きによらないで、小社もこれに与かっている。
  • 律令制において国司は任国内の諸社に神拝すると定められており、通説によると一宮の起源は国司が巡拝する神社の順番にあると言われている。律令制崩壊の後も、その地域の第一の神社として一宮などの名称は使われ続けた。現在ではすべての神社は平等とされるが、かつて一宮とされた神社のほとんどが「△△国一宮」を名乗っている。


 近代

 分類

  • 近代社格制度では、社格を「官社」と「諸社」(民社)、「無格社」に分ける。
  • なお伊勢の神宮(伊勢神宮)は、「全ての神社の上にあり、社格のない特別な存在」とされた。
分類小分類国幣/官幣備考
官社
(官国幣社)
官幣大社官幣社主に二十二社や勅祭社、神宮号をもつ神社が列格。65社
国幣大社国幣社旧一宮が多い。6社
官幣中社官幣社北野神社*、太宰府神社*。23社
国幣中社国幣社
官幣小社官幣社
国幣小社国幣社
別格官幣社官幣社
諸社
(民社)
府県社
郷社
村社
無格社
  • ※北野神社と太宰府神社は、本来は別格官幣社。後述。
  • 諸社(民社)は、府社=県社=藩社>郷社>村社の順である。
  • 府社の社格は東京府・大阪府・京都府の3府に所在の神社に与えられ、県社はそれ以外の県に所在の神社に与えられたが、北海道や樺太は「県」がないにもかかわらず県社とされた。
  • 藩社は藩より奉幣を受けるとされたが、藩社が指定される前に廃藩置県で藩が消滅したため、列格した神社はない。

 官社

  • 官社とは、祈年祭・新嘗祭に国から奉幣を受ける神社である。
  • 官社は神祇官が祀る「官幣社」と、地方官(国司)が祀る「国幣社」に分けられ、律令制の社格に倣ってそれぞれに大・中・小の格があり、「昇格」が行われた。官幣社・国幣社をまとめて「官国幣社」ともいう。
  • ただし、五畿内・武蔵国・筑前国の官国幣社に相当する神社はすべて国幣社ではなく官幣社とされた。官幣社・国幣社に実質的差異はないが、例祭について、官幣社へは皇室(宮内省)から、国幣社へは国庫から幣帛が供進された点が異なる(祈年祭・新嘗祭はどちらも皇室から奉幣を受ける)。
  • 『神道辞典』などによると、官幣大社>国幣大社>官幣中社>国幣中社>官幣小社>国幣小社>別格官幣社 となるが、官幣中社と国幣大社はどちらが上かなどの明確な規定はない。
  • なお、臣下であった菅原道真を主祭神とする天満宮は天神信仰によって祭神は雷神と同一視されたため、北野神社(現・北野天満宮)と太宰府神社(現・太宰府天満宮)の2社が例外的に別格官幣社ではなく待遇が上となる官幣中社に列した。

 官幣大社・国幣大社の一覧

社名
(現在の社名)
所在地式内一宮別表他の社格
官幣大社
札幌神社
(北海道神宮)
北海道札幌市中央区(蝦夷国)別表
月山神社山形県鶴岡市名神別表
鹿島神宮茨城県鹿嶋市名神常陸国別表勅祭社
香取神宮千葉県香取市名神下総国別表勅祭社
安房神社千葉県館山市名神安房国別表
氷川神社埼玉県さいたま市大宮区名神武蔵国別表勅祭社
日枝神社東京都千代田区別表
明治神宮東京都渋谷区別表勅祭社
三嶋神社
(三嶋大社)
静岡県三島市名神伊豆国別表
浅間神社
(富士山本宮浅間大社)
静岡県富士宮市名神駿河国別表
諏訪神社
(諏訪大社)
長野県諏訪市ほか名神信濃国別表
熱田神宮愛知県名古屋市熱田区名神別表勅祭社
気比神宮福井県敦賀市名神越前国別表
日吉(ひえ)神社
(日吉(ひよし)大社)
滋賀県大津市名神別表二十二社
建部神社
(建部大社)
滋賀県大津市名神近江国別表
多賀神社
(多賀大社)
滋賀県犬上郡多賀町小社別表
近江神宮滋賀県大津市別表勅祭社
国懸神宮・日前神宮
(日前神宮・國懸神宮)
和歌山県和歌山市名神
名神
紀伊国
紀伊国
単立
竈山神社和歌山県和歌山市小社別表
熊野坐神社
(熊野本宮大社)
和歌山県田辺市名神別表
熊野速玉神社
(熊野速玉大社)
和歌山県新宮市大社別表
丹生都比売神社和歌山県伊都郡かつらぎ町名神紀伊国別表
賀茂別雷神社
(上賀茂神社)
京都府京都市北区名神山城国別表二十二社・勅祭社
賀茂御祖神社
(下鴨神社)
京都府京都市左京区名神山城国別表二十二社・勅祭社
石清水八幡宮京都府八幡市別表二十二社・勅祭社
松尾神社
(松尾大社)
京都府京都市西京区名神別表二十二社
平野神社京都府京都市北区名神別表二十二社
稲荷神社
(伏見稲荷大社)
京都府京都市伏見区名神単立二十二社
平安神宮京都府京都市左京区別表勅祭社
八坂神社京都府京都市東山区別表二十二社
白峯神宮京都府京都市上京区別表
大神神社奈良県桜井市名神大和国別表二十二社
大和神社奈良県天理市名神別表二十二社
石上神宮奈良県天理市名神別表二十二社
春日神社
(春日大社)
奈良県奈良市名神別表二十二社・勅祭社
廣瀬神社
(廣瀬大社)
奈良県北葛城郡河合町名神別表二十二社
龍田神社
(龍田大社)
奈良県生駒郡三郷町名神別表二十二社
丹生川上神社
(丹生川上神社〔中社〕)
(丹生川上神社上社)
(丹生川上神社下社)

奈良県吉野郡東吉野村
奈良県吉野郡東吉野村
奈良県吉野郡下市町
名神
別表
別表
別表
二十二社
橿原神宮奈良県橿原市別表勅祭社
吉野神宮奈良県吉野郡吉野町別表
枚岡神社大阪府東大阪市名神河内国別表
大鳥神社
(大鳥大社)
大阪府堺市西区名神和泉国別表
住吉神社
(住吉大社)
大阪府大阪市住吉区名神摂津国別表二十二社
生国魂神社大阪府大阪市天王寺区名神別表
水無瀬神宮大阪府三島郡島本町別表
廣田神社兵庫県西宮市名神別表二十二社
伊弉諾神社
(伊弉諾神宮)
兵庫県淡路市名神淡路国別表
出雲大社島根県出雲市名神出雲国別表勅祭社
赤間神宮山口県下関市別表
香椎宮福岡県福岡市東区別表勅祭社
宗像神社
(宗像大社)
福岡県宗像市名神別表
筥崎宮福岡県福岡市東区名神筑前国別表
宇佐神宮大分県宇佐市名神豊前国別表勅祭社
阿蘇神社熊本県阿蘇市名神肥後国別表
宮崎神宮宮崎県宮崎市別表
鵜戸神宮宮崎県日南市別表
霧島神宮鹿児島県霧島市別表
鹿児島神宮鹿児島県霧島市大社大隅国別表
樺太神社
(廃社)
樺太豊原市
台湾神宮
(廃社)
台湾台北州台北市
朝鮮神宮
(廃社)
朝鮮京畿道京城府勅祭社
扶余神宮
(未鎮座)
朝鮮忠清南道扶餘郡
関東神宮
(廃社)
関東州旅順市
南洋神社
(廃社の後に再建)
南洋庁パラオ・コロール島
国幣大社
気多神社
(気多大社)
石川県羽咋市名神能登国単立
南宮神社
(南宮大社)
岐阜県不破郡垂井町名神美濃国別表
多度神社
(多度大社)
三重県桑名市名神別表
熊野神社
(熊野大社)
島根県松江市名神出雲国別表
大山祇神社愛媛県今治市名神伊予国別表
高良神社
(高良大社)
福岡県久留米市名神筑後国別表

 別格官幣社(べっかくかんぺいしゃ)

  • 後に、国家に功績を挙げた忠臣や、国家のために亡くなったや兵士を祭神として祀る神社のために別格官幣社が創設され、明治5年(1872年)に楠木正成を主祭神とする湊川神社が初の別格官幣社に列格している。

    国乱ヲ平定シ国家中興ノ大業ヲ輔翼シ,又ハ国難ニ殉セシモノ,若クハ国家ニ特別顕著ナル功労アルモノニシテ,万民仰慕シ,其ノ功績現今已ニ祀ラレシモノニ比シテ譲ラサルモノ,但シ一神一社ニ限ル

  • 別格官幣社は官幣小社と待遇は同じであるが、国幣小社よりも上位とされた規定はない。
社名列格日所在地主な祭神別表
湊川神社明治5年4月29日兵庫県神戸市中央区楠木正成別表
東照宮
(日光東照宮)
明治6年6月9日栃木県日光市徳川家康他単立
豊國神社明治6年8月14日京都府京都市東山区豊臣秀吉別表
護王神社明治7年12月22日京都府京都市上京区和気清麻呂他別表
談山神社明治7年12月22日奈良県桜井市藤原鎌足別表
建勲神社明治8年4月24日京都府京都市北区織田信長別表
藤島神社明治9年11月7日福井県福井市新田義貞別表
菊池神社明治11年1月10日熊本県菊池市菊池武時他別表
名和神社明治11年1月10日鳥取県西伯郡大山町名和長年別表
靖國神社明治12年6月4日東京都千代田区護国の英霊単立
阿部野神社明治15年1月24日大阪府大阪市阿倍野区北畠親房、北畠顕家別表
結城神社明治15年1月24日三重県津市結城宗広別表
小御門神社明治15年6月4日千葉県成田市藤原師賢別表
照國神社明治15年12月15日鹿児島県鹿児島市島津斉彬別表
常磐神社明治15年12月15日茨城県水戸市徳川光圀、徳川斉昭別表
豊榮神社明治15年12月15日山口県山口市毛利元就別表
霊山神社明治18年4月22日福島県伊達市北畠親房、北畠顕家他別表
梨木神社明治18年10月10日京都府京都市上京区三條実萬、三条実美単立
東照宮
(久能山東照宮)
明治21年5月1日静岡県静岡市駿河区徳川家康別表
四條畷神社明治22年12月13日大阪府四條畷市楠木正行他別表
唐沢山神社明治23年11月27日栃木県佐野市藤原秀郷別表
上杉神社明治35年4月26日山形県米沢市上杉謙信、上杉鷹山別表
尾山神社明治35年4月26日石川県金沢市前田利家別表
野田神社大正4年11月10日山口県山口市毛利敬親、毛利元徳別表
北畠神社昭和3年11月10日三重県津市北畠顕能別表
佐嘉神社昭和8年9月28日佐賀県佐賀市鍋島直正、鍋島直大別表
山内神社昭和9年4月20日高知県高知市土佐藩歴代藩主単立
福井神社昭和18年9月20日福井県福井市松平慶永別表
  • 単立:包括な宗教団体に属さない独立した宗教団体。


 近代社格制度の廃止(第二次大戦後)

  • 昭和21年(1946年)2月2日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の神道指令により神社の国家管理が廃止されると同時に廃止された。
    • 「国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件」(SCAPIN-448) 連合国軍最高司令部指令:文部科学省
    • GHQの干渉を恐れ、石の社名標の社格が刻まれた部分をセメントで埋めた神社が多かった。その後セメントを除去した社名標もあるが、現在でもそのままのものも多い。

 戦後の神社制度

  • 昭和21年(1946年)2月2日の神社の国家管理の廃止に伴い、公的な社格の制度(近代社格制度)が廃止されたため、それに代わるものとして昭和23年(1948年)に定められた。社格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。
  • しかし、旧の官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等に関して一般神社と同じ扱いをすると不都合があることから、「役職員進退に関する規程」において特別な扱いをすることと定めている。その対象となる神社が同規程の別表に記載されていることから、「別表に掲げる神社」(別表神社)と呼ばれる。
  • 当初の別表神社は旧官国幣社のみであったが、昭和26年(1951年)に「別表に掲げる神社選定に関する件」という通達が出され、官国幣社以外で新たに別表神社に加える神社の選定基準が示された。それは以下のものである。
  1. 由緒
  2. 社殿・境内地などの神社に関する施設の状況
  3. 常勤の神職の数
  4. 最近3年間の経済状況
  5. 神社の活動状況
  6. 氏子崇敬者の数および分布状況
  • なお、社格同様、伊勢神宮は別格として別表神社に入れられておらず、神宮大宮司は、「神宮規則」により、勅裁を得て任免するとされ、さらに特別の扱いがなされている。

 別表神社(べっぴょうじんじゃ)

  • 格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。しかし、旧の官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等に関して一般神社と同じ扱いをすると不都合があることから、「役職員進退に関する規程」において特別な扱いをすることと定めている。その対象となる神社が同規程の別表に記載されていることから、「別表に掲げる神社」(別表神社)と呼ばれる。

 旧官国幣社で別表神社でない神社

  • 旧官国幣社のうち、以下に掲げる各社は神社本庁と被包括関係にないため、別表神社ではない。「被包括関係解消年」が1946年となっているものは、1946年の神社本庁発足当初から神社本庁との被包括関係にないものである。
名称鎮座地式内近代その他の社格解消年
伏見稲荷大社京都府京都市伏見区名神官幣大社二十二社1946年
日前神宮・國懸神宮和歌山県和歌山市名神官幣大社紀伊国一宮1946年
梅宮大社京都府京都市右京区名神官幣中社二十二社1946年
靖国神社東京都千代田区別格官幣社勅祭社1946年
出雲大神宮京都府亀岡市名神国幣中社丹波国一宮1946年
鎌倉宮神奈川県鎌倉市官幣中社
山内神社高知県高知市別格官幣社
東照宮栃木県日光市別格官幣社1985年
気多大社石川県羽咋市名神国幣大社能登国一宮2005年
梨木神社京都府京都市上京区別格官幣社2013年
  • 名神:名神大社(みょうじんたいしゃ)。古より霊験が著しいとされる「名神」を祀る神社。
  • 解消年:被包括関係解消年

2017年離脱の富岡八幡宮は、旧府社で明治元年(1868年)に定められた准勅祭社12社のひとつ。准勅祭社の制度は明治3年(1870年)9月1日に廃止される。のち昭和50年(1975年)に昭和天皇即位50年を奉祝して関係神社が協議を行い、准勅祭社から23区内の10社を巡る「東京十社巡り」が企画され、同社も選定されている。


 その他

 勅祭社(ちょくさいしゃ)

  • 勅祭社とは、祭祀に際して天皇により勅使が遣わされる(これを勅祭という)神社のことである。ただし、毎年五大祭(月次祭を除く)に勅使が遣わされる伊勢神宮は別格とされて勅祭社に含めない。
社名式内一宮二十二社近代社格別表鎮座地備考
賀茂別雷神社
賀茂御祖神社
名神山城国二十二社官幣大社別表京都市北区
京都市左京区
「賀茂神社」
石清水八幡宮二十二社官幣大社別表京都府八幡市国史見在社
春日大社名神二十二社官幣大社別表奈良県奈良市
熱田神宮名神官幣大社別表名古屋市熱田区
出雲大社名神出雲国官幣大社別表島根県出雲市
氷川神社名神武蔵国官幣大社別表さいたま市大宮区
鹿島神宮名神常陸国官幣大社別表茨城県鹿嶋市
香取神宮名神下総国官幣大社別表千葉県香取市
橿原神宮官幣大社別表奈良県橿原市明治創建
近江神宮官幣大社別表滋賀県大津市昭和創建
平安神宮官幣大社別表京都市左京区明治創建
明治神宮官幣大社別表東京都渋谷区大正創建
靖国神社別格官幣社単立東京都千代田区明治創建
宇佐神宮名神豊前国官幣大社別表大分県宇佐市
香椎宮官幣大社別表福岡市東区国史見在社
朝鮮神宮官幣大社京畿道京城府大正創建、廃社

 二十二社(にじゅうにしゃ)

  • 二十二社は、神社の社格の一つ。国家の重大事、天変地異の時などに朝廷から特別の奉幣を受けた。
  • 平安時代後期、後朱雀天皇治世の長暦3年(1039年)に22社目の日吉社が加わり、白河天皇治世の永保元年(1081年)に制度としての二十二社が確立したとされる。京から見て遠方の神社ではなく、主に畿内の神社から選ばれた。
記載社名現在社格
社名所在地式内社一宮近代勅祭別表
上七社
太神宮神宮(伊勢神宮)三重県伊勢市神宮
石清水石清水八幡宮京都府八幡市国史官大勅祭別表
賀茂賀茂別雷神社
(上賀茂神社)
京都府京都市北区名神大山城国官大勅祭別表
賀茂御祖神社
(下鴨神社)
京都府京都市左京区名神大官大勅祭別表
松尾松尾大社京都府京都市西京区名神大官大別表
平埜平野神社京都府京都市北区名神大官大別表
稲荷伏見稲荷大社京都府京都市伏見区名神大官大
春日春日大社奈良県奈良市名神大官大勅祭別表
中七社
大原野大原野神社京都府京都市西京区国史官中別表
大神大神神社奈良県桜井市名神大大和国官大別表
石上石上神宮奈良県天理市名神大官大別表
大和大和神社奈良県天理市名神大官大別表
廣瀬廣瀬大社奈良県北葛城郡河合町名神大官大別表
龍田龍田大社奈良県生駒郡三郷町名神大官大別表
住吉住吉大社大阪市大阪市住吉区名神大摂津国官大別表
下八社
日吉日吉大社滋賀県大津市名神大官大別表
梅宮梅宮大社京都府京都市右京区名神大官中
吉田吉田神社京都府京都市左京区式外官中別表
廣田廣田神社兵庫県西宮市名神大官大別表
祇園八坂神社京都府京都市東山区式外官大別表
北野北野天満宮京都府京都市上京区式外官中別表
丹生丹生川上神社(中社)奈良県吉野郡東吉野村名神大 官大 別表
丹生川上神社上社奈良県吉野郡川上村別表
丹生川上神社下社奈良県吉野郡下市町別表
貴布禰貴船神社京都府京都市左京区名神大官中別表
  • 国史:国史見在社(こくしげんざいしゃ)。六国史に記載のある神社のこと。
  • 名神大:名神大社(みょうじんたいしゃ)。古より霊験が著しいとされる「名神」を祀る神社。

 建武中興十五社(けんむちゅうこうじゅうごしゃ)

  • 建武中興十五社とは、建武中興(建武の新政)に尽力した南朝側の皇族・武将などを主祭神とする15の神社である。これらの神社は「建武中興十五社会」を結成している。

 国史見在社(こくしげんざいしゃ)

  • 国史現在社(こくしげんざいしゃ)、国史所載社(こくししょさいしゃ)、こくしけんざいしゃとも。
  • 六国史に見在する式外社を指す言葉。
    六国史とは、官選正史である「日本書紀」、「続日本記」、「日本後記」、「続日本後記」、「日本文徳天皇実録」、「日本三代実録」をいう。
  • 式内社とともに朝廷の尊崇が厚く、由緒ある神社として重んじられる。その数は60余か国390余社に及ぶ。
  • 「国史見在社」と「延喜式神名帳」の関係において、次のように分類することができる。
  1. 国史見在社かつ式内社
  2. 国史見在社かつ式外社:いわゆる国史見在社
    石清水八幡宮、大原野神社、手向山八幡宮、御霊神社(大阪市中央区)、秋葉山本宮秋葉神社(静岡県浜松市)、白鬚神社(滋賀県高島市)、八幡神社(福井県小浜市)、廣峯神社(兵庫県姫路市)、香椎宮(福岡市)、高千穂神社(宮崎県西臼杵郡)など
  3. 非国史見在社かつ式内社
  4. 非国史見在社かつ式外社
    八坂神社、吉田神社、須賀神社など

 名神大社(みょうじんたいしゃ)

  • 名神大社とは、日本の律令制下において、名神祭の対象となる神々(名神)を祀る神社である。
  • 古代における社格の1つとされ、その全てが大社(官幣大社・国幣大社)に列していることから「名神大社」と呼ばれる。『延喜式』巻3の「臨時祭」の「名神祭」の条下(以下「名神祭式」という)と、同巻9・10の「神名式」(「延喜式神名帳」)に掲示され、後者の記載に当たっては「名神大」と略記されている。
  • 「名神祭式」には、「名神大社」として203社285座が記されているが、「神名帳」には226社313座が記されており、「神名帳」にあって「名神祭式」に見えない名神が23社28座あることになる。
  • このずれについては、両者の管轄が違ったためとする説や、式の伝写の間の誤写・攙入であろうとする説、新たに列せられた名神大社が「名神祭式」には全て記載されていない遺漏であるとする説がある。


 関連項目


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