上龍下龍正宗

　上り竜下り竜正宗（のぼりりゅうくだりりゅうまさむね）

短刀
銘　正宗
刃長八寸四分
徳川ミュージアム所蔵（焼身）

• 名物帳では「上下龍」、また古剣書では「上り竜下り竜正宗（上龍下龍正宗）」「のぼり竜正宗」「のぼる竜正宗」などとも表記される。いずれも意味するところは同じ。

• 享保名物帳所載（ヤケ）

  上下龍正宗　長八寸四分　無代　御物
  表裏刀樋忠先まで掻通し、表倶利伽羅、裏下り龍に釼あり、直刃銘樋へかゝり半分見える
  

  「のぼりくだりりゅう」

• 表裏とも幅広の刀樋を中心先まで通し、その中に差表には剣巻き竜、裏には下り竜が三鈷柄の剣の切先をつかむ。鋩子は小丸でやや長く返る。
• 中心はうぶ、目釘孔瓢箪形。銘「正宗」二字銘で樋にかかり半分は消える。

　由来

• 彫物の竜に由来する。

　来歴

　信長

• もとは織田信長の蔵刀。

  上龍下龍正宗　脇差

• 天正8年（1580年）に津田宗及が拝見している。

　秀吉

• のち秀吉が入手し、一之箱に収めた。本阿弥光徳が押形を採っている。

  一之箱　のほりれう正宗
  御物、のほり龍、長さ八寸四分、ヤ。上り龍正宗、銘正宗
  上龍 八寸四分 銘 正宗

　家康

• 大坂落城の際に焼けるが、越前康継により再刃され引き続き家康の所蔵となる。

　水戸家

• 家康の没後、駿府御分物で水戸徳川家に分与される。

  上下れう正宗
  （駿府御分物刀剣元帳 御脇差-大坂焼物）

• 大正9年（1920年）の関東大震災時の火災で焼けている。

  正宗刀　在銘　昇降龍の彫あり
  長八寸三分　ハバキ元八分九厘　厚二分二厘
  傳云、豊関白所蔵、有吉光義弘等之名刀、正宗亦其一也、大坂之敗也、悉皆罹兵火、公家拝謁之、乃命劍工越前康継更焼其刄云
  

  従来、水戸徳川家所蔵の刀剣類は関東大震災でことごとく焼失したと伝えられてきた。しかし2015年5月に、水戸徳川ミュージアムで燭台切光忠が焼身の状態で保存されていることが知れ渡った。詳細は不明だが、この「上り竜下り竜正宗」を含め他の刀も状態はさておくとして残っている可能性がある。

• 2017年7月4日、焼身の状態で保管されていることが判明した。

  豊臣秀吉が所蔵していましたが、大阪の陣で罹災。
  のちに刀工　越前康継が再刃しましたが、
  関東大震災で再び焼け身となりました。
  刀身の龍の姿がおわかりいただけますでしょうか？
  徳川ミュージアム　企画展　刀剣プロジェクト成果展Ⅰ～短刀　上下龍正宗・短刀　無銘　郷義弘～｜徳川ミュージアムのブログ
  

  水戸徳川ミュージアムの表記では名物帳どおり「短刀　上下龍正宗」となっている。