大正名器鑑


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大正名器鑑(たいしょうめいきかん)  

高橋義雄による茶器辞典
大正十五年刊
全十套十二冊
本編九套十一冊、索引一套一冊、第四・第五各一套二冊

Table of Contents

概要  

  • 高橋義雄(茶人号:箒庵)が、大正15年(1926年)に刊行した茶器辞典。
  • 昭和12年(1937年)には普及版として再版されており、いずれの版も国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる。
  • 高橋義雄は、文久元年(1861年)に水戸藩士高橋常房の四男として生まれ、13歳で植田村の呉服店「近藤」に丁稚奉公に出された。
  • 明治11年(1878年)ごろ水戸の漢学塾・自彊舎に通っており、その後福沢諭吉が新聞事業のため文章のうまい学生を探しているという話を聞き、上京。明治14年(1881年)慶應義塾に入学して1年間ほど学んだ後、明治15年(1882年)に福澤率いる時事新報の記者になった。
  • のち前橋の商人下村善太郎と知り合い、彼の援助を受けて渡米、その際にデパート経営に興味を持ち帰国後三井銀行へと入社し大阪支店長。明治28年(1895年)には三井呉服店の理事となり諸改革を行い三越の近代化を推めた。のち三井家の重役として腕を揮った。
  • 明治44年(1911年)51歳のときに実業界を引退して茶人となり、この「大正名器鑑」や「東都茶会記」などの茶道に関する著作を残した。益田孝、原三渓らと交友関係にあった。
  • 昭和12年(1937年)77歳で死去。

目次  

  1. 【第一編】〔茶入之部〕
    漢作唐物肩衝・漢作唐物茄子
  2. 【第二編】
    漢作唐物文琳・漢作唐物瓢箪・漢作唐物丸壺・漢作唐物大海・漢作唐物鶴首及鶴子・漢作唐物雑・島物・追加唐物肩衝
  3. 【第三編】
    〔古瀬戸之部〕:肩衝・文琳・丸壺・尻膨・柿・桐高・耳付・芋子・大海
    〔春慶之部〕:朝日・文琳・瓢箪・雑
  4. 【第四編】
    〔眞中古之部〕
    野田手・橋姫手・思河手・大瓶手・大覺寺手・面取手・小川手・藤四郎・柳藤四郎・糸目藤四郎・虫咀藤四郎・
    〔藤四郎春慶之部〕
    雪柳手・塞手・〆切・瓢箪
    〔後春慶之部〕:正信
    〔金華山之部〕:飛鳥川手・玉柏手・瀧浪手・生海鼠手・大津手・廣澤手・眞如堂手・盤余野手・二見手・藤浪手・天手目
  5. 【第五編・上】
    〔破風窯之部〕
    翁手・凢手・口廣手・澁紙手・皆の川手・音羽手・正木手・橋立手・玉川手・米市手・市場手
    〔後釜之部〕
    利休窯・織部窯・正意・萬右衛門・親兵衛・宗伯・吉兵衛・茂右衛門・源十郎・鳴海堂
  6. 【第五編・下】
    〔國焼之部〕
    唐津・祖母懐・備前・伊部・薩摩・高取・膳所・丹波・信樂・志都呂・追加之部
  7. 【第六編】
    〔天目之部〕
    曜變・油滴・建盞・灰被・玳玻盞・雑天目・靑磁之部・割高臺之部・人形手之部・雲鶴、狂言袴之部・熊川之部・玉子手之部・雨漏堅手之部・御所丸之部
  8. 【第七編】
    〔井戸之部〕
    名物手・古井戸・小貫乳・靑井戸・井戸脇・呉器之部・魚屋之部・柿の帶之部・
    蕎麥之部・御本之部
  9. 【第八編】
    伊羅保之部・粉引之部・三島之部・刷毛目之部・楚白之部・金海之部・高麗之部・奥高麗之部・瀬戸之部・伯庵之部・尼焼之部・常慶之部・ノンカウ之部・宗全之部・原叟之部・光悦之部

序文  

普及版序文  

余は明治二十五年、初めて茶室の人と爲つてより、爾來幾多の茶會に臨みて、銘物茶入茶碗を見る毎に、其名稱、傳來・寸法・附属品等を究明せんと欲し、古茶書書に就て之を調査すれども、記事簡略、考證疎漏にして、要領を得ざる者多きを遺憾とせしが、徳川時代に於ては、銘器が大抵諸大名家の寶藏中に在りて、容易に之を拝見する能はず、幕府の老中松平乗邑、德川の懿親松平宗納の力を以てしても、猶ほ彼の名物記、若くは古今名物類聚以上の記録を作ることを得なかつたのである。然るに明治大正の昭代と爲りては、交通機關の發達と共に、諸國に散財する銘物拝觀の便宜が増進したので、是れぞ千載一遇の好機會なりと思ひ、余は明治四十五年多年没頭したる實業界引退後間もなく直に名器鑑編纂の準備に着手し、大正六年頃より、全國銘器の國勢調査を實行し始めたが、此頃よりして舊大名家の藏器が續々市場に賣出され、銘器實見上非常の都合を得たので、其後数年間、調査と編纂とを継續し、大正十五年末に至りて、全部完成する事を得たのである。

唯此名器鑑は、藝術的趣味的見地より、印刷製本等に最善美を期したので、儥価が高く、部數が少く、出版直後より己に絶本と爲りて、廣く世間に流布する事を得ざりしは誠に遺憾千萬であつた。然るに近年茶道興隆の氣運に向ひ、銘器研究熱が至る處に沸騰し來りたるにぞ、曩に小野賢一郎氏編陶器大辭典を出版されたる寶雲舎主幹小池倖一郎氏が、早くも此に着眼し、慎重に種々の研究を重ねて原本の體裁を崩さず然も能く普及の目的を達すべく、最低儥を以て之を好事家に頒布せんとする計畫を立てられたのは洵に欣幸の至りである。本鑑中には、大正發亥の大震火災に罹りて焼亡したる二十餘點の銘物も其面影を留め、又今や全國各地に分散して、容易に見る可らざる珍什逸品の形狀、來歴、寸法、附属品等を居ながら拝悉し得る便宜もあれば、世間好事の諸賢、此好機會を逸せず、須らく一本を座右に備へて、自家は勿論、後人の爲めにも永く参考資料に供せられん事を切に希望する次第である。
昭和十二年一月吉辰
                 箒庵 高橋義雄述

国立国会図書館デジタルコレクション  

関連項目